職場のメンタルヘルスとは②

福岡県糟屋郡宇美町の「かなた社会保険労務士事務所」代表の田中幸代です。

1月8日に「職場のメンタルヘルスとは①」を書かせていただきましたが、今回はその続きになっております。
ご参考になれば幸いです。

3.職場のメンタルヘルス対策 その体制作りと実務対応

メンタルヘルス対策は「四つのケア」が効果的

企業はどのようにしてメンタルヘルス対策を行っていけばいいのでしょうか。
まず、企業には労働契約法の下、「安全配慮義務」が課せられています。
厚生労働省の指針では「職場の心の健康づくりの体制の整備」など、会社が策定すべき「心の健康づくり計画」を定めています。
具体的な進め方としては、「セルフケア」「ラインケア」「内部EAP」「外部EAP」という四つの切り口で対応していくことを提唱しています。

メンタルヘルス「四つのケア」

(1)セルフケア

セルフケアは、従業員自らが行うストレスへの気づきと対応のことで、メンタルヘルス対策の第一歩はここから始まります。
自分でストレス反応をコントロールする方法を学び、職場でのストレス耐性を高める「セルフコントロール研修」という手法が効果的です。

「セルフコントロール研修」は、自分自身のストレスの現状を知り、上手にストレスと付き合うための「心理学的スキル」を学ぶためのものです。
人はストレス要因に遭遇したとき、プラスとマイナスの二通りの捉え方をします。
例えば、新しい仕事を担当することになった場合を考えてみましょう。
新しい仕事を「脅威」と捉えるか、それとも「コントロール可能なもの」と捉えるかで、その後の状況は大きく違ってきます。
脅威と捉えた場合、不安な気持ちに包まれ、自分ではどう対処していいのかが分からなくなり、ストレスがどんどん溜まっていきます。
一方、コントロール可能なものだと思えば、不安な気持ちになることは少ないでしょう。
困難なこともポジティブに捉え、難しい仕事に対してやりがいを感じ、積極的に対処していくようになります。
このように、ストレスに遭遇した際にどういう捉え方をし、どんな対処方法を取るのかは分岐点といえます。

また、自分自身でストレスに対処していくセルフケアを行う場合、以下に示したような行動やスキルを習得することが効果的です。

【感情・思考の状態の記録】

ストレスを感じたとき、自分の「感情・思考」の状態を記録として毎日付けていくこと。
日々の感情・思考の記録を付けることにより、自分の認知のパターンや傾向に気づき、ストレスを感じることのない、別の考え方を探すことができるようになります。

【リラクゼーションスキル】

リラクゼーションとは、ストレスを受けて発生した感情や生理反応をできるだけ軽減していくこと。
リラクゼーションすることによって体の反応を変えれば、感情も変えることができます。
「筋弛緩法」「呼吸法」「自律訓練法」などの手法(スキル)を学ぶことによって、ストレス感情の減少のほか、肩こりなどの筋肉の緊張を減少させることができるようになります。

【マインドフルネス(瞑想)】

マインドフルネスとは、雑念を持たず、いま起こっていることに集中する心のあり方のこと。
緊張感から解放され、最も自分の力を発揮できる状態です。
このようなマインドフルネスの状態となるために用いられる方法が「瞑想」です。
静かな場所で目を閉じて瞑想し、雑念や無駄な思考のないところに自分の心を持って行くことにより、ストレスが解消され、精神的にも肉体的にも緊張が緩和されていきます。
アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズが、瞑想を習慣にしていたことはよく知られています。

【対人関係スキル】

会社組織において、対人関係を良好に保つことは大変重要です。
適切なコミュニケーションが求められる中、相手に自分の意見や考えをうまく伝えることができれば、自信へとつながっていくでしょう。
「アサーション」(自分の考え・意見として、言うべきことは言う)と呼ばれる対人関係スキルを習得すれば、職場における人関関係を円滑に進めることができるようになります。

アサーションを行う際のポイントは、「私は~」という主語(アイメッセージ)を使い、自分の気持ちを伝えること。自分が主語となるので自覚的となり、考えていることを率直に表現することができます。
また、初めから「無理です」「できません」といった否定的な言葉は使わず、相手に状況を説明し、相談していく中で「こうしたら可能です」など、譲歩案を提示していくようにします。
その際、相手とは常に対等であることを意識し、自分が上司である場合には、普段から命令口調を改めるようにします。

(2)ラインケア

ラインケアは、管理者が行う職場環境などの改善と相談への対応のこと。
言うまでもなく、管理者にとって部下のマネジメントは重要な仕事です。
メンタルヘルス対策の場合、部下の健康状態とともに労働時間や仕事の量・質をチェック。
部下がストレスを溜めていないか、またそのストレスに対処しているかどうかを見極め、心身ともに健康で仕事に取り組めるよう管理・指導し、部下の心身の健康に配慮することが求められます。

そのためには、不満や抱えているストレス、仕事に対する意欲や気力などについて、部下からしっかりと話を聴く時間を確保する必要があります。
心の問題の予兆に気づいて相談に乗ったり、必要に応じてアドバイスを行ったりするなど、早い段階から問題に気づいて対処できるよう、心掛けなくてはなりません。

(3)内部EAP

「EAP」(従業員支援プログラム)は「Employee Assistance Program」の略称で、メンタルヘルス対策として相談室を設けたり、カウンセラーを配置したりするなどして、従業員を支援するプログラムのこと。
職場のストレスや、上司や部下との人間関係、セクハラ・パワハラ、キャリアに関する問題、プライベートな悩みなど、働く人の仕事の生産性に影響を与える原因と客観的に向き合い、解決の糸口を探して、健康な状態で安定して働くことができるようにサポートします。

EAPは、内部で行う場合と外部で行う場合があります。
健全な職場環境を保持するには、職場内に専門スタッフがいることが望ましいでしょう。
内部EAPは、自社内の産業保健スタッフなどが職場環境やストレスの状況について評価し、管理者と協力して改善をしていくことを目的としています。
そのため、現場との密接な連携が必要です。

(4)外部EAP

社内に専門スタッフを雇用することが難しく、「外部EAP」を利用する企業が増えています。
その背景には、大きく分けて二つの理由があります。
一つ目は、コストが安いこと。
二つ目は、内部EAPと比べて利用率が高いこと。

外部EAPはプライバシーが厳格に守られているので、従業員は安心して利用することができます。
その結果、疾患に至る前の早期対応も可能となります。
主な社外の専門機関には、公的機関である地域産業保健センター、産業保健総合支援センター、中央労働災害防止協会のほか、民間の専門医療機関やEPA(従業員支援プログラム)などがあります。

4.メンタルヘルス対策のポイント・留意点

会社には「安全配慮義務(健康配慮義務)」が求められる

会社には労働契約上、従業員を業務に就かせるに当たり、従業員の生命・身体・健康を守らなくてはならない義務、つまり「過度の徒労や心理的負担をかけて従業員を心身の健康を損なうことのないよう注意する義務」があります。
これを「安全配慮義務(健康配慮義務)」と言います。

メンタルヘルス対策として、従業員からの「相談窓口」などを設置する企業が増えています。
しかし、それだけでは安全配慮義務を果たしているとは言えません。
過去の判例でも、従業員の長時間労働や健康悪化を知りながら、具体的な業務軽減措置を取らなかったことから、会社の「安全配慮義務」違反を認めたケースがあります。

なお、「かなた社会保険労務士事務所」では、「社外の相談窓口」としてご契約いただき、従業員さんとLINEでご相談のやり取りをするというサービスもおこなっております!

「安全配慮義務」違反となるポイントは、大きく二つあります。
一つは「予見可能性」。
従業員の健康を害することを、会社が予測できた可能性があったかどうか。
もう一つは「結果回避性」。
会社として、それを回避する手段があったかどうかです。
これらを講じなかった場合、「安全配慮義務」違反を問われることになります。

詳しくは労務相談として支援をおこないますので、お気軽にお問合せください。

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TanakaSachiyo
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