職場のメンタルヘルスとは①

福岡県糟屋郡宇美町の「かなた社会保険労務士事務所」代表の田中幸代です。

まず、メンタルヘルスとは?

「心の病気」そのものを指す言葉ではなく、「心の健康状態」(精神的健康)を問う言葉。
人は心が健康であれば、ポジティブな状態を安定的に保つことができます。
仕事に対して意欲的な姿勢で臨むことができ、日常的にもいきいきとした生活を送ることができるでしょう。
WHO(世界保健機構)では「健康」について「病気でないということではなく、身体的、心理的、社会的に満たされた状態(Well-being)であること」と定義しています。
このようにメンタルヘルスは、精神的健康として身体的健康に対比して用いられる言葉であり、「精神が健康なので、病気ではない」という視点だけでは不十分なのです。

1.特別な病気ではなく、ストレスや悩みを抱えている状態も、メンタルヘルス不調に当てはまる

メンタルヘルスは、特別な病気や病状だけを指すものではありません。
「うつ病」や「パニック障害」といった病名が付いている状態だけでなく、ごく普通に働いている人が何らかのストレスや悩みを抱えて気分が落ち込んでいる状態も、メンタルヘルス不調に当てはまります。
つまり、現代では誰もがメンタルヘルス不調になり得るわけです。
そこで、気持ちが落ち込むことなく、調子の良い状態で生活していくことが大切であると考えられるようになり、メンタルヘルスに関する取り組みが注目されるようになったのです。

近年は働く環境や仕事内容、組織風土、人間関係などが大きく変化しているため、ストレスとなる要因が以前よりも職場に増加しています。
仕事や人間関係の不安や悩みが解決しないまま過度のストレスを抱えたり、長時間労働が必要以上に続いたりすると、メンタルヘルス不調へとつながりかねません。

厚生労働省の「過重労働による健康障害を防ぐために」によると、月100時間を超える残業や、2~6ヵ月平均の月の残業時間が80時間を超えると、健康障害のリスクが高まるそうです。
長時間労働の下でこのような状況に陥り、心の健康を損なう人が急増しているため、企業にとってメンタルヘルス対策は大きな課題となっています。

2.メンタルヘルス対策が求められる背景

「心の病」についての調査データから分かること

では、働く人のメンタルヘルスの現状はどうなっているのでしょうか。
このテーマを長期間リサーチしている日本生産性本部「メンタルヘルス研究所」が2017年に行った「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケートの結果を見ると、「心の病」の年代別割合は、40代、30代が3割を上回って最も多くなっています。
さらに、10~20代の若年層も3割近くまで上昇しており、過去に行った調査結果と比べて、各世代の比率が平準化していることが明らかとなりました。
つまり現在では、職場におけるあらゆる年齢層の人たちが「心の病」にかかるリスクがある、ということ。一般的に、仕事の責任と権限がアンバランスであることが「心の病」を引き起こす要因の一つでいわれますが、そのアンバランスさが各世代共通となってきていることが近年の特徴と言えます。

メンタルヘルスが及ぼす悪影響とは?

メンタルヘルスの悪化は、従業員と会社に対して大きな悪影響(デメリット)をもたらします。

従業員・遅刻・欠勤の増加
・作業効率の低下、業務上のミス・遅延、ケガ・事故の発生
・休職・離職の発生 など
会社・組織活力・生産性の低下、収益の悪化
・求職者・退職者発生によるコスト負担増
・スキャンダルによる企業イメージの低下 など

まず従業員の場合、心の病が原因でストレスがたまると、遅刻や欠勤が増加します。
作業効率が低下して業務上のミスや遅延が起きたり、ケガや事故へとつながったりすることもあります。
結果的に長期療養による休職や離職を余儀なくされるケースも少なくありません。

そのような状況に陥った場合、ビジネスパーソンはキャリア形成と生活の維持において重大なリスクを抱えることになります。
企業にとってもそれは同様で、組織活力の停滞など、さまざまな悪影響が起こることも考えられます。
組織全体の生産性が低下すれば、収益にも大きく影響するでしょう。

休職者が出た場合、医療費の負担をはじめ、傷病手当見舞金、代替となる人件費などが必要になります。
退職となった場合は、人材補充のための募集・採用に関わる費用など、さまざまなコストもかかります。
さらに、労働災害が適用されると次年度から労災の保険金が増加することになり、労災から民事訴訟に発展すれば損害賠償が請求されます。
当然、裁判に関わる費用や弁護士費用なども膨大なものとなるでしょう。

こうした影響は、コスト面だけに止まりません。
過重労働による自殺者が出た場合、会社のイメージダウンは不可避と言えます。
取引先・株主からの信頼を失うほか、従業員のモラルダウン、募集・採用活動への悪影響といった「負の連鎖」を引き起こすことにもなりかねません。
企業存続の危機に陥ることも十分に考えられます。

このように、従業員のメンタルヘルス不調によるさまざまな影響を考えると、企業にとってメンタルヘルスへの対応は喫緊の課題と言えます。
メンタルヘルス対策の速やかな実施は、会社全体で取り組むべき「リスクマネジメント」として不可欠であり、重要な企業戦略と位置付けることができます。

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TanakaSachiyo
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