解雇について(解雇予告手当含む)
福岡県糟屋郡宇美町の「かなた社会保険労務士事務所」代表の田中幸代です。
さて、先日は問題社員の対応について、解雇や退職勧奨についてブログで取り上げました。
ここで、解雇についてもう少し掘り下げて書いていきたいと思います。
解雇とは、従業員の同意なく、企業から一方的な通知により雇用契約を終了させることです。
解雇には正当な解雇理由が必要です。(労働契約法第16条)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます。
解雇に「客観的に合理的な理由」がなければ、不当解雇とされ、過去に遡って会社が多額の金銭支払いを命じられます。
解雇理由は、大きく以下の3つに分類されます。
①労働能力の欠如、病気やケガによる就業不能、勤務成績の著しい不良など
②業務命令違反、規律違反、機密情報の漏えい、ハラスメントなど
③整理解雇(経営上の必要性)※いわゆるリストラ
そして不当解雇と判断される可能性が高いケースは下記のようなものになります。
・新卒者、未経験者に十分な指導をせずに能力不足だとして解雇するケース
・休職すれば復職の見込みがあるのに休職を認めずに解雇するケース
・医師が復職可と判断しているのに復職を認めずに解雇するケース
・休職期間経過後にしばらくの間、負担の軽い仕事につけるなどの配慮をすれば徐々に復職できるにもかかわらず、そのような配慮をしないで解雇するケース
・協調性の欠如があるが、会社が十分な指導や人間関係の調整を行っていないケース
・上司との相性が悪くトラブルを起こすが、会社が相性の良い部署を探すための配置転換を行っていないケース
・会社が遅刻や欠勤に対してなんら指導をしていないケース
・遅刻や欠勤の程度が重大といえないケース
※しかし、遅刻について懲戒処分を受けた後も6か月間に24回の遅刻と14回の欠勤をしたケースについて解雇は正当と判断した裁判例があります。
・業務命令が退職に追い込む目的や嫌がらせ目的のものであって正当なものといえないケース
・業務命令の趣旨や必要性について会社が十分な説明をしておらず、十分な説明をすれば業務命令に従う可能性が残されていると判断されるケース
・業務上の必要がないのに退職に追い込む目的で転勤を命じるケース
・重度の障害がある家族を介護する立場にあるなど、転勤を拒否することについてやむを得ない事情があるケース
・欠勤に至ったことについて、ハラスメント等が原因であるなど会社側の落ち度があるケース
・無断欠勤の原因が精神疾患であることが推測され、本来、休職を認めるべきであると判断されるケース
・ハラスメント等について過去に指導や注意を受けたことがないのに、もしくは、十分な証拠がないのに懲戒解雇するケース
・私生活上のけんかや交通事故や飲酒運転、無免許運転などについて、会社名が報道されるなど会社への影響がないのに解雇するケース
・職歴の一部を省略する、学歴について大学中退を高校卒業と申告するなど、重要とはいえない経歴詐称、学歴詐称を理由に解雇するケース
ずらずらっと並べて、良くありそうなものをお伝えしてみましたが、どれも解雇とまではいかない内容のものや、会社側が指導や配慮すれば解雇しなくても済むものが不当解雇とされます。
また、解雇する場合、原則として少なくとも30日前に予告するか、予告しない場合は30日分以上の平均賃金を支払わなければならない、とされています(労働基準法第20条)。
そして、必要となる予告日数は、平均賃金1日分を支払った日数分だけ短縮することができます(同条2項)。
この解雇予告の代わりに支払われる最低30日分の平均賃金のことを、解雇予告手当といいます。
解雇予告手当は、原則、解雇と同時に支払われなければならないとされています。
このように前回のブログでもお伝えしたように、「解雇は簡単に出来ない」というのが上記に並べた要因があるからです。
解雇は慎重に、そして我々、社会保険労務士等に相談しながら進めていかれることをお勧めします。

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