熱中症対策のための休憩時間は労働時間?

福岡県糟屋郡宇美町の「かなた社会保険労務士事務所」代表の田中幸代です。

熱中症対策のために、作業を中断する時間があるが、その時間は労働時間に当たるか?というご質問をいただくことが増えてきました。
特に今年は梅雨明けが早かったのもあって、猛暑が長く感じますよね。

まず、労働基準法という法律における労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間のことであり、待機時間については、
「使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)は、労働時間に当たる。」
と解されています。

このため、例えば、12:00~15:00 の間に熱中症対策のために作業をいったん中止すると決めた場合、
・ その間に天候の変化などによってWBGT値(※)の低下があった場合には、直ちに作業を再開できるよう労働者を待機させている場合には、その時間は労働時間に該当します。
・ その間は、昼休みなどの休み時間と同等程度に労働者が自由に利用することができ、仮にWBGT値が下がったとしても、あらかじめ定められた休憩時間中は作業を再開する趣旨のものではなく、使用者から作業に復帰するよう指示を受けることもなく労働から完全に解放され、労働者が権利として労働から離れることを保障されている場合には、休憩時間であるとして労働時間に該当しない、とされています。

なお、作業を中止することとした時間を休憩時間と取り扱う場合には、労働者の1日の拘束時間が長時間に及ぶことのないよう留意することが望ましいとされています。
作業を中断している時間を休憩時間とした場合についても、労使の話合い等によって、この時間に対する手当を労働者に支払うこととしても差し支えございません。
ただし、手当を支払った時間を手待ち時間として扱った場合には、労働時間となります。
また、夏季に実施する工事については、熱中症予防のために休憩時間が長く設定される場合があることを考慮した適正な工期の設定や、労働者に適切な賃金や手当が支払われることに配慮して労務費などの価格の設定が行われるよう、発注、受注に当たって留意することが必要である。

(※)WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature)値とは?
暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数で、自然湿球温度、黒球温度、気温(乾球温度)から算出する数値

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TanakaSachiyo
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